JBDF 第25回サマーセミナー
2025年 07月 01日
公益財団法人日本ボールルームダンス連盟主催
2025年度第25回サマーセミナーが6月25日
[ティアラこうとう]大ホールにて開催されました。
担当したテーマは<ハラスメントについて>でした。
参考までに掲載します。
令和7年度サマーセミナー
ダンス・ハラスメントの防止と健全なダンス指導のあり方をめぐる提言
JBDF顧問弁護士 澤 野 順 彦
この提言は、ボールルーム・ダンス教室における楽しい健全なダンス指導のあり方等についてまとめたものである。
1.ダンス指導者と生徒との関係
ダンス教室におけるダンス指導者とレッスンを受ける生徒・会員との関係は、教育現場における先生と生徒との関係と同様に、先生は、生徒が先生を信頼して授業に集中できるような教育環境を整備し、生徒の個性や能力を理解し、個々のニーズに合わせた指導を行うことが求められる。
≪キーワード≫ 信頼関係・コミュニケーション・指導力
2.指導者等と生徒との法的位置づけ
指導者(教授所も含めて)と生徒との法律関係は、準委任関係と解されることから、受任者である指導者は善良な管理者の注意義務を持って生徒の教育に力を注がなければならず、指導者がダンスの指導にあたり、その人の能力や地位、そして客観的な状況に応じて通常期待される注意義務を怠り、その結果債務不履行(生徒に不利益な状況)が発生した場合には、民事上、その損害を賠償する責任が生ずるとともに、指導者の所属する組織や団体から指導者としての責任(懲戒処分等)を問われ、場合によっては刑事上の責任を追求されることになる。
また、指導者が属する教授所も同様の法的責任(使用者責任)が生ずるおそれがある。
≪キーワード≫ 善管注意義務・民事上の損害賠償責任・刑事責任・懲戒処分等・教授所の使用者責任
3.ダンス指導上のハラスメント
ハラスメントとは、相手方に不快感や不利益を与える行為全般をいい、具体的にダンス指導上におけるハラスメントとしては、パワーハラスメント、セクシュアルハラスメント、モラルハラスメント等が考えられ、主に生徒に精神的苦痛や不利益を与え、ダンスの指導環境を悪化させることになる。
このようなハラスメントが発生する場合としては、レッスン場に限らず、競技会や発表会、またパートナーの紹介に当たり、その現場のみならず、各種のウェブを通じて拡散されることにより、被害者の精神的苦痛が拡大する傾向にある。
≪キーワード≫ ハラスメント(意義、種類)・ウェブによる拡大
4.ダンスハラスメントの内容
(1)パワーハラスメント
指導者の優位性を利用して、指導の適正範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える、またはレッスン環境を悪化させる行為
ア.(身体的、精神的侵害)
暴行、傷害、侮辱、暴言
イ.(人間関係からの切り離し)
無視
ウ.(過大な要求)
明らかに不用なことの要求・遂行不可能なことの要求
エ.(過小な要求)
指導上の合理性がないのに能力・経験と大きくかけ離れた行為の要求
オ.(個の侵害)
過度に私的なことに介入
(2)セクシュアルハラスメント
相手の意に反する性的な言動により生徒のレッスンに不利益を与えたり、ダンスの指導環境を害したりする行為
ア.(対価型)
生徒の意に反する性的な言動に対する生徒の反応(拒否など)により、ダンス指導上の不利益を与える。
イ.(環境型)
意に反する性的な言動により指導環境が不快なものとなり、レッスンに身が入らないなど、能力向上に悪影響が生じ、ダンスの指導環境に支障が生じる。
∴ 具体的内容として、性的な内容の電話やメール、不必要な身体への接触、性的な冗談やからかい、食事やデートへのしつこい誘い、容姿を褒める、服装を注意する、パーティーへのしつこい誘い、愛称の呼称などがこれに該たる。
セクハラのグレーゾーンであっても、相手方が不快に感じている場合にはセクハラと認定されることもある。
(3)モラルハラスメント
言動や態度によって相手に精神的苦痛を与える行為。物理的な暴力でなく、言葉や表情、態度(最近ではメール等)で相手を追い詰めるのが特徴。指導者と生徒間だけでなく、生徒間でも発生する可能性があるので指導者は要注意
≪キーワード≫ パワハラ、セクハラ、モラハラ
5.ハラスメントが認められる場合の対処
(1)相談窓口の充実・公表
(2)相談者の意向確認
(3)事情聴取
(4)緊急対応の検討
(5)事実認定
(6)各組織における対応
ア.ダンス教授所で発生したハラスメントについては、一次的には、当該教授所において適切に対応し、解決することが原則である。
イ.当該教授所が、本法人(JBDF)の会員が代表を務める認定教室の場合には、本法人の定款その他の諸規定に基づき対処することになり、本法人コンプライアンス委員会または事務局が窓口となる。
ウ.加害指導者及び同人が所属していた教授所と生徒との関係は、民事上、刑事上の 責任に発展する可能性もある。
≪キーワード≫ ハラスメントの認定、ハラスメント加害者の責任
6.ハラスメントを防止する意味
(1)楽しくダンスレッスンが享受できる環境の整備
(2)指導者としての能力、資質の向上
≪キーワード≫ 指導者の能力・資質
以上
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by sawano-law
| 2025-07-01 10:13
| 研修会等